2005年 06月 06日
Buck Owens And His Backaroos “Roll Out The Red Carpet” (1966)
ナッシュヴィルのカントリーが極度にポピュラー化しつつあったとき、西海岸ではそれに反旗を翻すような形で実に興味深いシーンがありました。古くはマドックス・ブラザーズ等に代表されるシーンで、南部産のものには無いどこかカラっとしたサウンドが特徴的な俗に言う「ベイカーズ・フィールド・サウンド」というやつです。
そして実はこれこそカントリーロック誕生の直接的な起爆剤になっているんですよね。特にここに紹介するバック・オウエンズや、マール・ハガードなどのスターの60年代録音における感覚は、グラム・パーソンズ参加期におけるバーズのサウンドの持つそれと本当に近しいものを感じます。
ロッキンで軽快なカントリーという意味では同時期のテキサスのシーンなどがありますが、ベイカーズフィールドの場合、それをもっとソリッドに、もっと言えばロックに展開しています。このあたりの傾向が、ポストサイケデリックの時代に新しい音楽を思索していた若きグラム・パーソンズやクリス・ヒルマン等の進んだミュージシャンにアピールした部分なんじゃないでしょうか。
極めて軽快なリズムの上で二本のテレキャスターが小気味よく疾走し、そこにスティールギター絶妙に絡んでくる…。まさにあのバーズが名作『ロデオの恋人』の上で展開していたサウンドの原型がここにあると思います。最終的にこのバック・オウエンスのスタイルをより8ビート化していったのが後のカントリーロックの偉人達である訳で、やはりカントリーロックという音楽は何もポッと出で発生したムーヴメントではないということがわかります。
また面白いことに、そうした経緯で生まれたカントリー・ロックが最終的にはナッシュヴィルのシーンに影響を与え、例えばエリアコード615などの極めて先鋭的なミュージシャンの一派が浮上してきたりと、一筋縄ではいかないアメリカポピュラー音楽の絵巻図のようなものに感じ入ってしまったりします。


c0075476_2503959.jpgさてこのアルバムはバック・オウエンスと彼のバンド、バッカルーズが最も脂に乗っていた60年代半ばに発表されたものです。彼のような人の場合、駄作いったものはあまり無く、初めて聞くべきアルバムがこれでなくてはいけないといったようなこともありません。(ただし、稀にあるクリスマスソング集やスタンダード集といったものは初めての場合避けられたいですが。)しかし、前述の通り、このアルバムが発表された1966年頃というのは彼らの全盛期でもありますし、そして何よりカントリーロック成立の歴史を見た上でこの時期のアルバムというのはとても興味深いものだと思うんです。グラム・パーソンズなどは恐らくこの辺りのアルバムを通してカントリーロックへのモチベーションを高めていったはずですし、彼らが青春期に聞いていたであろうレコードはこういったものだったんだろうな、などと想像しながら聴くのもまた一興でないかなと思います…。

でももちろんそういったカントリーロックとの絡みにおいてのみ楽しむというよりはむしろこの時期のベイカーズ・フィールドサウンド独特の旨み、カッコよさを味わってみるというのが正統でしょうね。このゾクゾクするほどのアンサンブル、軽妙さ、フレッシュな演奏、どこをとってもカッコいい!


ちなみに僕の持っているのはLPでしかも恐らくオリジナル盤なんですよね。そしてその音のいいこと!これがアメリカの音なのかしら、なんて勝手に思っています。
でも現在入手できるCDはここらへんのことを本当によくわかってる優良レーベルのサンデイズドレーベル(いつもお世話になってます)がリイシューしたものなのでかなり雰囲気のある音になっていそうですね!普段はガレージパンクなどのリイシューをなりわいとしているサンデイズドレーベルからこうした作品がリイシュー(しかもバック・オウエンスに関してはもの凄いカタログ量!)されていること自体に深い感慨を禁じえません。


長々と書いてしまいましたが、このバック・オウエンス、カントリーロック好きなんだけどそれ以前のカントリーも聴いてみようかしら、という方には本当におススメですよ!是非。

<しばさき>
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by beatken | 2005-06-06 02:51 | review


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