2005年 06月 06日
Merle Haggard & the Strangers “I'm a Lonesome Fugitive” (1967)
というわけで前回に引き続いて今度はバック・オウエンズに次ぐベイカーズフィールドサウンドの大スター、マール・ハガードの作品をレビューしてみたいと思います。

何を隠そうこの人こそがあのグラム・パーソンズが最も憧れた人なんですね。マール・ハガードというと一般的には反ヒッピー歌である「オーキー・フロム・マスコギー」という曲をヒットさせたスクエアなオジンというイメージがあるかもしれません。しかし実のところ、この人自身元々からして生粋のアウトローであり、ただ単純に「国を愛する良識ある大人」としての立場から先の歌を歌った訳では決して無いと思います。彼の内には、深い孤独や反骨の精神や放浪の精神が染み付いていたはずであり、先の曲はそういう男からの、浮き足立った当時の開放思想への皮肉であり、そういったヒッピー文化の持つ危うさへの警鐘ではなかったかと今にして感じられるわけです。(実際に歴史はその後ルーツと内省を経過していく訳だが…)そして、グラム・パーソンズや一部の思慮深いミュージシャン達はそういったことを理解していたからこそ彼を信望したんだと思います。

c0075476_2541444.jpgこの作品は、彼と彼のバンド、ストレンジャーズ(泣かせるバンド名…)が最も脂に乗り切っていた時期(1967年)の作品であり、奇しくも前回のバック・オウエンスの作品とほぼ同時期なんです。それだけこの時期のベイカーズサウンドの充実ぶりが素晴らしいということですね。
軽快なロッキンビートに乗って小気味よい演奏が繰り広げられるという点ではバックと変わらないのですが、何といっても彼の特長的な面といったらその哀愁を含んだスタイル、特にボーカルだと思います。バックの場合はバラードを歌っていてもどこか明るく、あまり後ろ向きな感覚というものを受けないのですが、ハガードの場合はどこか寂しげな、それでいて無骨な不良っぽさに溢れている気がするのです。やはりこのことは彼の人生観が波乱に富んだならず者としての美学に貫かれているからなのでしょうか。有名な話として、巨人ジョニー・キャッシュのサンクエンティン刑務所でのライブ盤に、「聴衆として」参加しているという逸話があります…。民衆歌としての、はぐれ者の音楽としてのカントリーミュージックというものを最も体現しているのがキャッシュとハガードであるかもしれません。
そしてそういった部分にこそグラムが心酔した要素があるのかもしれませんね。余談になるんですが、現在マール・ハガードはあのエピタフ・レコード(!)傘下のレーベルに所属し活動しています。アウトローな精神性が今も活き活きとして受け入れられ、「オルタナカントリー」として認識されているという事実を知るにつけ、何か熱いものを感じてしまうのでした。


追記になるのですが…。
このレビューを書くためにアマゾンのページを見ていたらビックリしてしまいました。異様に安いんですね!新品CD。700円とかそれくらいでこの時期の名作群が買えてしまうみたいです。これは嬉しいなあ。興味ある方は是非気楽な感じで注文してみてはいかがでしょうか?

<しばさき>
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by beatken | 2005-06-06 02:54 | review


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