2008年 08月 08日
ジョージ・ハリスン「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」
c0075476_16513166.jpg夏バテ解消を目指し、様々な方法を試してみましたが、どれもいまいち効きません。
脂ののった生きのいい中国ウナギも大いに食べましたし、カキ氷にリゲインぶっかけてみたり、昨日なんかは夏季限定「キットカット・スイカ味」を勢いで口に入れたりもしました。ネスレの社員が思いつきでとりあえず作ってみたんじゃないかという気がとてもする味でした。

しかしなぜだか一向に、夏バテの奴は出て行こうとはせず、「ああ、せっかく政府の言うとおりエアコンの設定温度を28℃にしてがんばっているのにやるせないことだなあ」と考えていた矢先に解決策がありました。魚心あれば水心。何事もこちらから向かっていくことが肝要っすね。

ジョージ・ハリスン「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」

久しく聴いていなかったこの一枚をターンテーブルに乗せた時から、夏バテどころか、今年の夏は今から始まるんじゃないかという気さえしてくる魔法の一枚。ジョージが亡くなってからもう七年余りが経とうとしています。生きていてもまだたかだか六十代半ば。ジョージと深い親交のあったボブ・ディランがほぼ同じ年齢で、現在もネヴァー・エンディングツアーを精力的に続けていることを考えても、あまりに早すぎる死であったと思います。
そんなことに想いを馳せながら、簡単な説明をすると、このアルバムは、前作「オール・シングス・マスト・パス」から約三年後にリリースされた、ビートルズ解散後のソロ二作目。前作の大成功や、チャリティー・コンサートの先駆け「コンサート・フォー・バングラデシュ」の開催などから、ジョージは当時「解散して一番得をしたビートル」と呼ばれ、実力・セールス共に大成功を収めていました。このアルバムも全米で五週連続アルバム・ヒットチャートの一位に輝いています。
そんな状況にありながらも、このアルバムは世間の流れとは全く別の場所に存在しているかのごとく静謐で、より宗教的な祈りの込められたものとなっています。さりとて堅苦しいものでは決してなく、逆にポップで親しみやすいところがジョージの魅力です。

一曲目、「Give Me Love(Give Me Peace On Earth)」は唯一のシングル・カット曲で、ポール率いるウィングス「マイ・ラヴ」を抜いて「マイ・スウィート・ロード」以来二度目の全米ナンバーワンを獲得。いかにもジョージらしいスライドギターと、神に語りかけるような詞。何よりもジョージのヴォーカルが何とも言えず深い味わいを醸し出していて、何度でも聴きたくなるような優しい佳曲となっています。一発目からこんな名曲とあっては、もうこのアルバム全体が素晴らしいものであることは決定事項って感じです。

レコーディングには、リンゴ・スター、ジム・ケルトナー、ニッキー・ホプキンス、クラウス・フォアマン、ゲイリー・ライトなどなど、錚々たる顔振りが参加。プロデュースは、当初フィル・スペクターに共同で依頼しようと思っていたところが、精神的に不安定・アルコール中毒などの理由から断念。ジョージのセルフ・プロデュースとなっていて、あの特徴的な「音の壁」から離れたジョージの音が聴けるアルバムである、とも言えます。

表題曲「Living In The Material World」には、物質世界(マテリアル・ワールド)に生きる自分と精神世界(スピリチュアル・スカイ)に存在する神とを対比させた詞世界が広がり、特に、ビートルズのメンバーを名指しで登場させているところが興味深いところです。物質世界について歌う時にはガチャガチャした騒がしいバッキングが、精神世界を歌う時にはシタールやタンブーラで幻想的に、という歌い分けも面白い一曲。

みんなみんな物、物、物の世界さ
ジョンとポールも御多分にもれずこの世界
ひ弱ながらも各々ソロで動き始めたが
所詮”便利なリンゴ”だけは欠かさなかった
そうさぼくらも物、物、物の世界のいい例

この”便利なリンゴ”の部分で、当のリンゴがフィル・インを入れている。ユーモアも欠かさないジョージ、最高!

他にも、ジェシ・エド・ディヴィスが「スー・ミー・スーユー・ブルース」をカバーしていたり、コンサート・フォー・バングラデシュではビートルズ再結成の可能性もあったなどなど、言及したいことは多いですが、十一曲入り四十分のアルバムが、そろそろ三周目を終わろうとしているところですので、今日はこの辺で切り上げることにしましょう。


ぼくが住んでいるのは
物、物、物の世界

ここに居れば自分さえ見失うほど
でもこんな世界に生きてこそ
全てが開け、はっきりと見えてもくるのさ



おまけ:「Give Me Love」/91年日本公演(日本人が永遠に自慢できるジョージの単独公演)

<なかむら>
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by beatken | 2008-08-08 16:51 | review


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