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2005年 06月 05日
Peter Rowan “Peter Rowan”(1978)
キザで、ユーモアがあって、温かくて…。
普通のカントリーミュージックとも違う、かといってカントリーロックでもないような…。それでいてテックス・メックスな風味などもあったりして。そこはかとなくトロピカルな風をも感じるような、そんな不思議な作品。

c0075476_14514.jpgこのふんわりとしたソフト・サウンディングな音がとても気持ちよいんです。とはいってもナッシュビル産の如才ないポップカントリー(好きですが…)とも違って確かにどこかヒップでロックなスピリットが宿っていたりもするんです。それはやはりこの人が元々アースオペラやシートレインなどといった先鋭的なルーツミュージックをやるバンドにいたっていうのが大きいんだと思います。伝統的なスタイルを踏襲しながらもほのかに時代の匂いを忍び込ませるような、そんなお洒落さってどこかこの時期のアコースティック・スウィングの人達と共通するところがある気がして、とても嬉しくなっちゃいます。

この作品がFlying Fishというインディーレーベルからひっそり出された1978年、はたしてどれだけの人がこうした豊かなルーツミュージックの魅力を享受できたのだろう。あの時代にあってこんなにもノンビリした、マイペースでルーツな作品を残すなんてなんてヒップな人だろうか。時代の流れに乗らないことがヒップな場合もあるんだ。

それにしてもこの洒落っ気はどうだろう…。あくまで楽しく、お茶目に。理屈抜きにウキウキしちゃう。これこそグッド・タイム・ミュージック…。

女の子とかにも受ける気がするんだけどどうかな。お試しを…。

<しばさき>
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by beatken | 2005-06-05 01:05 | review
2005年 06月 05日
The Rolling Stones “Tattoo You”(1981)
冷静に考えて、あるいは先入観を抜きにして考えて、ストーンズならではの魅力がこんなにもストレートに感じられるアルバムもあまり他に無いんじゃないだろうか?どうしても「Start Me Up」のプロモ等におけるミックのエアロビクス的なキャラクターをイメージしてしまいゲッソリしがちだけれど、そういうトゥー・マッチな演出を除いて考えればこんなにストーンズ独特の良さを全体を通して体現しているアルバムは無いと思います。
しかしながらかく言う俺も昔これを初めて聴いたときは何か馴染めなかったのも事実。名作名作言われてるけどそんなもんかな、程度にしか考えて無かったです。今、それを反省しています。

c0075476_104699.jpg実のところこのアルバムは、ミックのキャラよりキースの凄さや彼の才能が充実しているんですよね。例の「弾かないギター」に磨きがかかり、もうプレイ全体が円熟と言っていいくらいの域にあって、このギターを聴いているだけでもう快感です。「Start Me Up」におけるリフの完成度、円熟度といったらもうThis is Stonesっていう風格ですし、ロックギタリストとしての彼のカッコよさにあらためて惚れ惚れしちまうんです。
それと曲のよさが凄く際立っているアルバムでもあります。軽く流しているようで渋く決めるロックンロール・チューン「Hang Fire]、切ないメロディーとミックのボーカルが素晴らしすぎる「Waiting On A Friend」、その他全ての曲が粒ぞろいで隙が無いように感じます。B面における怒涛のストーンズ流ソウルの応酬。それまでで最もソウルを違和感無く消化したストーンズがここにあると思います。ゲスト参加した巨匠ソニー・ロリンズのテナーに食われることなく自分達のペースでこんなにも豊かな演奏ができるのだから本当に凄いですよね。

次作以降ほどニューウェイブ色も強くなく、特に何か新しいことに取り組んだということでもないので一聴した限り地味な感じを受けますが、この独特のロックンロールはストーンズ以外に成しえないものだと思います。


追記:

この時期のライブ盤である名作「Still Life」を併せて聴くと魅力倍増!この時期のストーンズはホント最高!

<しばさき>
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by beatken | 2005-06-05 01:02 | review
2005年 05月 16日
ストリートロック
近頃ボスを初めとして「ストリートロック」にはまってしまっています。数年前なら、「ダッセ」と一蹴しちゃってそうな音楽でした…。が、今これが本当に沁みるんです。

一口に「ストリート・ロック」といっても、厳密にそういう音楽形態が存在するわけではなく、その魅力はもっと気持ち的な、感覚的な捉え方でもって理解すべきものだと思います。何だろうな、ひとつ確実にいえるのは女性には全く受け無そうなある種暑苦しいような魅力が…。この辺の傾向が嫌いな人には本当に嫌われそうな音楽ですね(笑)
でも思うんですけど、内なるパッションというべきか、その本質としてはルー・リードなどの音楽と合い通じる部分がありと思うんですが…。ルーらの音楽はそのシャレた「雰囲気」だけで十分鑑賞できうるものだけに、色々な誤解曲解があると思いますよ。本質はもっと汗臭いものだし、青臭くて痛みをも伴うものだと思います。単にインテリ的なアート思考でもってあそこまでの人間くさい表現が可能になるとは到底思えません。彼らは紛れも無いストリートロッカーだと思います。
アート的な洗練や泥くささ、黒っぽさやシャレた感覚などといったものは確かに音楽のもつ素晴らしい魅力であるとは思いますが、けっしてそれが全てではないはず。そういったもろもろの印象にまつわる魅力というのはあくまで外殻的な要素であり、それだけをあげつらって云々するのは逆に凄くスクエアな態度じゃないか?
「ロック」って本来ストリート的な要素を初めから内包していると思うのです。逆に言えば様式美にのみ拘泥したメタルとかはマジに興味ありませんし、先述のようにヴェルヴェッツとかをそういうアート的な様式で持ってしか評価しないのなら中学生的メタル馬鹿となんら変わりないんじゃないか。そういう奴とは一緒に風呂に入りたくない。(誤解の無いように書いておくと、そういう様式的な枠組みを飛び越えて魅力的なメタルやハードロックとかはとても好きです。シン・リジィ、モーターヘッド、AC/DC、グランドファンク、アリス・クーパー、ブルー・オイスター・カルト…。好き!)

そんじゃあお前のいう「ストリートロック」って何だ、ということになろうかと思いますが、これはやはり先述のような事情から字では説明しづらい…。強いて言えばオーセンティックなギターロックコンボで疾走感のあるポップなロックンロールを哀愁を織り交ぜ叩きつける!甘くなりすぎずビターで渋いロックンロール…。と言う感じでしょうか。字面的にはもの凄いダサそうですね(笑)

なのでやはりそういう風に外殻的な特徴をあげつらうより、例としてどんなミュージシャンがいるかをあげてみましょう。面白くなってきたぜ。

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なんつっても代表格はブルース‘ボス’スプリングスティーン(←写真)!説明不要の大物ですね。ストリートロックの何たるかが全て彼の音楽で表現されていますわ。初めて聴こうという方、決して『ボーン・イン・ザ・USA』以降を聴かないように!一般的にはここら辺が彼のパブリックイメージかと思いますが、むしろこの時期は彼の経歴からいって異色の時期です。大嫌いになる可能性があります。やはり『明日無き暴走』や『ザ・リヴァー』がお勧め!最高。あと意外かも知れませんが近年の作品も最高なんだよなー。


そしてボスの盟友サウス・サイド・ジョニー。初期がおすすめ。絶妙のソウル臭がたまりません。

c0075476_19281168.jpgそしてやはりウィリー・ナイル(→写真)。店頭であまり見かけないけど探す価値あります。


ガーランド・ジェフリーズ。この人はかなり多彩で、ソウル風味やレゲエ風味なんかもあって良い感じです。が、あくまで本質はストリート。

ジム・キャロル。映画『バスケット・ダイアリー』の原作者としても有名。パンク寄りの歌がカッコいいです。

グラハム・パーカー。パブロックのウルフ。問答無用にカッコいい。
パブロック全般に感じる小粋なかわいらしさみたいなものって、なんとなくストリートロック的なものと区別されるんですよね。そうはいっても少なくともパーカーとイアン・デューリー辺りはストリートロックに含めてもいいかもしれないです。

ウォーレン・ジヴォン。西海岸の皮肉屋。辛口の歌がカッコいい。

パティ・スミス。この人も入れちゃいます。無論カッコいい。

ジョナサン・リッチマン。ルーと同じ意味でストリート!大好き。

ジャクソン・ブラウン。意外かも知れないですが、この感動はストリート・ロックだぜ。

ジョン・クーガー・メレンキャンプ。来ました。安売られ王ですが。やっぱり本質はストリート・ロッカーだ。

トム・ペティ。忘れてました。この偉人を。西海岸の中では出色でしょうか。

ニルス・ロフグレン!ギター小僧版ストリートロッカー。こうなってくるとニールヤングも入れたいけど…。でも彼はストリートすら超越した独自の地平を爆走してるのでちょっと違うかな。
あ、そうそう、無論ディランと言う存在はここにあげた連中の中でそれはもう絶対的なものだと思いますよ。彼らの心の中には、常にディランに対する憧れみたいなものがあるはず。でもディランをこの括りに入れるっていうのはまた何か違うんですよね。なんていうかなあ、やっぱりニールと同じような理由で、もはや別格化しているというか。難しいですけど。

グレッグ・キーン。この人の在籍した「ビザークレー」というレーベルは強烈にストリート・ロックを感じさせます。

忘れてました!超重要人物を。エリオット・マーフィー!個人的にはボスに次ぐくらい好き。

ピーター・ウルフ、というかJガイルズ・バンド。男臭い系の最右翼。

ジュールズ・シアー。捻くれたポップ感が青春の哀しさを誘う。

ピーター・ケイス。パワーポップバンド、プリムソウルズの元メンバー。今やフォーキーなロックを聴かせる渋い芸風に。

ヒューイ・ルイス。その余剰在庫ぶりから馬鹿にされがちだが良質なストリート・ロッカーだと思います。

マーシャル・クレンショウ。パワーポップよりの人だが、映画『ラ・バンバ』でバディー・ホリーを演じる、その感じ、凄くストリートロックだ。

c0075476_19285933.jpgまたしても重要人物を忘れていた…。スティーブ・フォーバート(←写真)。フォークとスプリングスティーンの融合と言うべきか…。こうみるとニューヨークの人が多いんですね。都市に生きることっていうのはそういうこと。

初期のJ.D.サウザー。厳密に言うとファーストだけって感じなんだけど…。AORになってからは別に普通だからな。苦み走ったシンプルなロックが溜まらない。

忘れてた!(思い出しながら書いてるのであしからず…。)ミンク・デヴィル!このイタロな味がなんともチンピラ的でいいです。「イタロ」って重要なキーワードだと思う。ブロンクスを中心としたコミュニティの音楽。世代は違うがディオンなどもこの際含めたい。

ジョー・イーリー。珍しく南部からエントリー。生粋の南部人というよりは、若干の都市臭さを感じる。クラッシュとも共演したつわもの。

ジョン・ハイアット。同じく南部より。この人も不思議なストリート感を湛えているんだな。

初期のビリー・ジョエル。えっ!とう声が聞こえてきそうですが「ピアノ・マン」などで聞かれる情感は紛れも無くストリートロック的なもの。

シン・リジィ。この青くささ、ストリート臭さはやはりこのラインアップにふさわしいと思います。

このほか、周縁、さらに亜周縁的なものを考慮するととても書ききれそうにないのでこの位にしておきますが、まだまだ言及したい人達がいっぱい。ロイ・オービソン、ポール・ウェスターバーグ、ライアン・アダムス、ロス・ロボス、ロビー・ファルクス、ウォールフラワーズ、フーティー&ザブロウフィッシュ、佐野元春、等々…。


いやあ、長く書いてしまった。疲れた…。つい熱くなってしまいましたよ。

さあ、みんなでボスを聴こう!

<しばさき>
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by beatken | 2005-05-16 19:31 | review
2005年 05月 09日
Gene Clark “Roadmaster” (Recorded in 1970-1973, first Released in 1973)
名盤“White Light”に続いて、3rdソロアルバムを製作していたジーン・クラークですが、どんな理由でなのかそのアルバムの音源と言うのはお蔵入りしてしまいます。グラム抜きのバリトーズとの録音(最高!)やスプーナー・オールドハムやクラレンス・ホワイトとの録音も含む名セッションなのですが…。
また、バーズのオリジナルメンバーによる再結成というと73年にリリースされた盤が知られているところだと思いますが、遡ること数年、実は70年と71年にもプロデューサーにジム・ディッキンソン(!)を迎えてオリジナルメンバーによる再結成音源の録音が行われていたのですよ。

そのような素敵過ぎる未発表音源が存在しているとなれば何が何でも聴きたくなると言うのが音楽ファンというものです。うー、ウズウズしてきたぜ、という方、ご安心下さい。ここに紹介する様に、ちゃんと73年にオランダのレーベルによってLPに纏められ、しかもありがたいことに英国のedselからCDも再発されているのです。ちなみにブートレグではありませんよ。ちゃんとした再発盤ですから音質の方も良好です。
c0075476_4453327.jpg肝心の内容の方はというと、これがまた最高。個人的にバーズ人脈の中で最も優れたソングライターがこの人だと思っているんですが、この未発表音源集においても本当に素晴らしい曲を書いています。バーズ時代からややモダンで幽玄な曲における作曲に定評のあった彼だけあって、ここでも静謐で美しい曲を聴かせてくれているのです。特にバリトーズとの録音‘Here Tonight’における美しさといったら本当に鳥肌モノですよ!僕は普段クラブとか全然行かないのですが、時々お遊びでDJをするときはこの曲をかけるようにしてます。それくらい場の雰囲気をロマンチックにしてしまう名曲だと考えています。是非買って聴いてみてください!
勿論他の曲も最高の一言に尽きてしまいます。なんでこんな素晴らしい曲たちがお蔵入りなの?と訝ってしまいたくなるようなものばかりです。前作辺りから良い味になってきたソウル的なテイスト、この人ならではの美しいソングライティングとフォーキーで泣かせる歌声、そしてこの時期のカントリーロック独特の魔法が混ざり合って、ああ、正に天国だ…。
聴きながらこれを書いていたんですが、聴き入ってしまってなかなか筆が進みませんでした…。未発表曲集だからといって敬遠してしまっては勿体ないですよ。是非!

<しばさき>
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by beatken | 2005-05-09 04:45 | review
2005年 05月 09日
Warren Zevon “Warren Zevon” (1976)
晩年は病魔に蝕まれ、決して幸せと言えないような亡くなり方をした彼。年を重ねていくごとにより苛烈な作風とアウトローな雰囲気を増していった彼の人生の締めくくりが、そういった不幸な死によってだったということは、何かあまりにも皮肉な気がするのと同時に、やはり彼は死ぬまではみ出し者として生き抜いたのだろうか、などと多少ロマンを馳せてみたくもなってしまいます…。

ファンには有名な話ですが、もともとは69年にアルバム・デビューしていた彼。それが泣かず飛ばずで、エヴァリー・ブラザーズのツアーバンドを勤めたりしながらもプラプラしていたらしいです。そんな状況を見かねて再デビューの機会を与えたのがあのジャクソン・ブラウンだったという訳です。この時期、ジャクソン自身最愛の妻を亡くしていて、失意のどん底にありながらも創作活動を行っていました。そんな経緯から彼の音楽性も初期におけるポップで爽やかなものから、より人間の本質に切り込んでいくような苛烈でシリアスなものへと移行しつつありました。(その成果は76年の名作『プリテンダー』で聴けます。)そんな折このウォーレン・ジヴォンというアウトローにジャクソンが目をつけ、ここに紹介するデビューアルバムのプロデュースまでかってでたというのは、なにか偶然とは思えません。

c0075476_3331321.jpgカリフォルニアの太陽の下に生きる人間たちの、見逃されがちなダークサイドをえぐり、ハードボイルドに歌ってみせる彼。青少年の不埒な日々や痛々しいまでの感傷、強がり、弱さ、そういった青春を構成する決してハッピーではない側面が、彼の辛口な語り口によって暴かれていくんです。映画『オレンジ・カウンティ』で描かれたような、さんさんと太陽が降り注ぐけれどどこかやるせなげなカリフォルニアの風景。あるいはパンク歌手にしてビート作家、ジム・キャロル原作による名作『バスケット・ダイアリーズ』の世界。そんな映画に漂うような青春の希望と痛々しさといったものに思いを馳せながらこの人の歌を聴いていると本当に味わい深いものを感じられます。それこそ自分のこれまでの、あるいは今の、これからの生活とオーヴァーラップさせながら歌の世界に浸ってみると、もう本当にいいんですよね。

音楽的にも、無骨極まりないリズムと演奏がまた素晴らしいです。無骨ではあるのですが、かといって荒々しい訳ではなく絶妙に抑制の効いた渋味のある演奏です。あえて言えばやはりガーランド・ジェフリーズや初期JD・サウザーなどのストリート的感性を感じさせるようなロッカー達に近い感覚を湛えていると思います。そして、彼が70年に登場したもっとも重要なシンガー・ソングライターと言われるだけあって、曲がもう本当に良いんですよ。聴いてみてください。

この後80年代に若干の迷走などを重ねながらも、90年代にはさらにハードボイルドな歌を聴かせる歌手として色々なメジャー会社にホッポリ出されながらも、渋い、実に渋い活動を続けていたという彼でしたが、冒頭にも書いたと通り、不幸にもまだ若くしてこの世を去ってしまいます。
一生をアンチヒーロー的な世界観で生き抜いた孤高のロッカー。このビターな味わいが僕たちに示唆してくれるものの大きさは、音楽的なことを超えとても大きなものを秘めていると思います。

<しばさき>
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by beatken | 2005-05-09 03:33 | review
2005年 05月 02日
Heads Hands & feet “Old Soldiers Never Die” (1973)
ザ・バンドの登場は、海を隔てたイギリスにも多大な衝撃を与え、英国国内にさまざまなルーツ嗜好のバンドを結成させるきっかけとなりました。代表的な例としてはあのブリンズリー・シュウォーツがそうであります。しかし当時英国では国を挙げて未曾有のハード&ヘヴィ・ロックブームが巻き起こっていたため、どうしてもそのようなルーツロック志向のバンドはアンダーグラウンドな存在に留まりがちなのでした。
でも僕のようにパブロック発生の過程などに大きなロマンを感じてしまうようなタチの人間からすると、そのように地味~に活動していたバンド群の方にこそ興味を向けてしまうんです。そういったバンドたちの地道な活動がなければ後のパブ・ロックシーンがあんなにも充実したものには決してならなかっただろうし、むしろそういったクラブやパブなどの周縁的文化にこそ、生活と共に音楽を楽しむエンタテインメントの本質があるような気がします。パブやクラブにおいて普段着でビール片手に楽しむ音楽にこそ生活の哀歓が凝縮された本当の意味での娯楽がある気がするのです。決してスタジアムの狂乱では味わえない大切な感覚があるはずだと思うんです。

ここに紹介するHeads Hands & Feetというバンドもそういったパブ・ロック前夜の混沌としつつも実り多き時代に活躍したルーツ志向のバンドです。そして実はこのバンド、もともとアンダーグラウンドなクラブシーン等で活躍していたような連中によって結成されているというのがまた泣かせます。モダーンズなどの真にヒップな連中がこういったルーツィな方向に進んでいったっていうのも何やら素敵じゃないですか!泥臭いゴスペルの狂熱を英国風なセンスで消化した演奏はまことに素晴らしいです。スモーキーでくぐもったような音像にシンフォニックとさえ言える演奏、そして程よいアメリカンエッセンス、この時代のイギリスのバンドならではの独特の魅力があり、たまりません。
c0075476_1392236.jpgこのHeads Hands & Feet、マニアの方には後にエミルー・ハリスのホットバンドのメンバーに抜擢されたことで有名なアルバート・リーが在籍していたことで知られるバンドかもしれません。また、のちにチャス&デイブという名デュオで活躍するチャス・ホッジスが在籍したバンドということでも有名かもしれません。この人脈をみただけで何ともはや堪らないんです。
カントリー・ロックやスワンプ・ロックを自分たちの手でやってみよう!と集まった若者たちのウキウキするような気持ちがレコードに刻まれている気がして嬉しくなってしまいます。溌剌としたリックを連発して実に楽しそうに演奏するアルバート・リー。本当に音楽が好きでたまりません!っていう風情がビンビンに伝わってきてとっても爽快です。

<しばさき>
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by beatken | 2005-05-02 01:39 | review
2005年 05月 01日
Nick Lowe “The Wilderness Years” (Recorded between 1974-1977 Compiled in 1991)
c0075476_21483889.jpg
これこそ実は彼の裏ベストというか、傑作というか。ともかく今では高価でとても手に入らないようなレアかつ傑作なシングル曲等がまとめてお手軽に聞けちゃうってことで実にお得なコンピなんです。
ブリンズリー・シュウォーツ解散直後から地味にソロ活動していた彼ですが、惜しいことにこの時代にはアルバムを作っていないんですよ。ファーストとなる『ジーザス・オブ・クール』は78年発表だから、バンド解散からそれまでの3、4年間の間に発表したり録りためていた曲にこそあのパンクムーヴメント爆発寸前の時代の空気が閉じ込められているといった訳で、そういうパンキッシュで若々しいニック大好きな私あたりからすればもう堪らないわけです。ちょうどダムドのファーストをプロデュースしながらニックがどんなことを考えていたのかな、などと妄想してしまう向き(私だけれど)などにとっては堪らない作品集なんです。

ここにはスティッフでのデビューシングル‘So It Goes’のB面、‘Heart Of The City’や皮肉タップリの下手すりゃ本人達よりポップなベイ・シティ・ローラーズ応援歌(マジで名曲!)やディスコ賛歌(もちろん皮肉)、あるいはデイブ・エドマンズと録りためていたロックパイルへの布石となるロックフィールドセッション、果てはフィールグッズへの提供曲のセルフデモ等、正にファンにとってはヨダレもん、かつ基本のアイテムがいっぱい詰まってる訳なんです。最高。

未発表曲集とか聞くと敬遠しちゃう向きもあるかも知れませんが、これは聴いて。ここにはパブロックが輝いてた時代のドキュメントが刻まれています。これらを聴くだけで当時の時代感や、パブロックとはどういうものであるかがちょっとでも解って頂けると思うんです。
皮肉タップリに時代を歌ってみせるけど、ルーツやポップスへの愛情を決して忘れない。そんな愛くるし過ぎるパブロックとニックの本質がこの作品から少しでも解っていただけたら幸いです。
単純に楽曲的に考えてもこんな完成されたポップスは無いわけで、是非まあ気楽に楽しんでみてください。

<しばさき>
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by beatken | 2005-05-01 21:51 | review
2005年 05月 01日
Alex Chilton “Cliches” (1993)
c0075476_2464494.jpgアレックス・チルトンというと、かつてのファンには60代のボックス・トップス時代における若きソウル・シャウターという印象が、近年のオルタナ以降のファンにとっては伝説のビック・スターを率いた元祖パワーポッパーという印象が強いところでしょうが、このアルバム(1993)における彼は、そのどちらのファンをもいい意味で裏切るようななんとも彼らしくない世界を繰り広げています。いや、「らしくない」という表現は適当でないな。表面的、音楽的には確かに「らしくない」けれど、そこから立ち上る精神性は紛れも無く世紀の天才(変態)アレックス・チルトンという男そのものなのである。

ここでの彼は己のギター以外何一つ従えていない。頼るものは己の声とアコースティック・ギター一本のみ。えっ、ではフォークの弾き語りをやっているのですかといえばそうでもなく、なんとここで彼は意表をついて往年のジャズスタンダード、果てはバッハの楽曲にまで取り組んでいるのだから凄い。
コール・ポーターからチェット・ベイカーナンバーをギター片手に。こう書くといかにもお洒落で小粋なカフェ・ミュージックなんかを想像してしまうが、この男のことなので一筋縄にはいかない。確かに表面的に聞こえてくる音は非常にエスプリの効いた洒落っ気のあるグッドミュージックではあるのだが、醸し出す空気感がどこか異様なのだ。その妙な雰囲気を形容するのに適当な言葉が見当たらなくて困るのだけれど、いうなればやはりこれはロックのフィーリングであると思う。とても流暢にギターを弾き歌うので聴き逃しがちであるが、よく聴くとそのギター・プレイには若干のルードさや退廃的感覚が満ちていることに気付かされる。

考えてみれば本来、ジャズとはそのように「ロック」なものだったはずでなかろうか。チェット・ベイカーの歌と演奏を聴いてみよう。退廃と哀歓に満ちた響きに気付くだろう。如才なく晴れやかで、安定的で安全なジャズなんて本当のジャズではない。
残念ながらそのように「大人の嗜好品」と化してしまったジャズとジャズ文化そのものに対する痛烈なアンチテーゼとして彼はこのアルバムを録音したんじゃないだろうか、などと考えてしまう。

このアルバム、音の心地よさに何となく聞き流していると手痛いしっぺ返しを食らうことになるから注意が必要だ。
これはマジでカッコいい。紛れも無いロックであると思う。

<しばさき>
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by beatken | 2005-05-01 02:47 | review
2005年 05月 01日
green on red “Here Comes The Snakes” (1988)
USインディーズ、ポスト・パンク勢の中でも最もルーツ・ミュージックに接近していたのがこのバンドではないかと思う。最初期には、まるでクランプスかともいうようなゴシック的なガレージ・サウンドを鳴らしていた彼らだったが、現在アメリカーナ・シーンで渋い輝きを見せている名ギタリスト、チャック・プロフェットが加入したあたりから独特のルーツィな味を発揮し始めたようだ。実はアラバマ出身という出自からも納得の転向ではある。当初は、あのブラスターズやロス・ロボスが在籍したことで名高い名インディーレーベル、Slashに在籍していたこともあり、そういったレーベル・メイトの活動にも刺激を受けながら、カントリーなどのルーツ・ミュージックに視野を広げていったのかもしれない。

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このアルバムは、これまた名インディー、レストレスに移ってからのもので、これまでのルーツ路線をさらに深化、多様化させたバンドサウンドが聞ける。どちらかというと地味になりがちだった曲想にメリハリをつけることで完成度を増した。その代わりインディーバンド特有の程良いアマチュアリズムは薄まったように感じるが、こういった変遷や成長を味わうといったこともこの手のバンドを聞く時の醍醐味であるといえる。

歪んだギターが激しく動き回りながらも、どこかやるせない歌が響く。こいつら本当にニール・ヤングのことが好きなんだろうな、と聴いていてふと思ってしまう。それだけルーツミュージックへの視点は本当に確かなものだ。あのドニー・フリッツの名曲、‘We Had It All’の素晴らしいカヴァーを聴いているとその想いをさらに強くするのだ。

現在のオルタナ・カントリーのシーンを考えた時、このバンドがつけた先陣というのは本当に大きいものであると思う。パンクを通過したルーツ・ミュージックというアイデアをここまでの形で具現化し、後続へ手本を示したという点でとても重要だ。忘れ去られるには惜しいバンドである。

<しばさき>
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by beatken | 2005-05-01 01:44 | review
2005年 04月 17日
高田渡さんが亡くなられました…。
日本フォークの黎明期を支え、その独特の視点と語り口によって素晴らしい歌を我々に届けてくれた高田渡さん。病気の療養中というニュースは聞いていたのですが、残念ながら亡くなられてしまいました。本当に悲しく、やり切れません。

高校のとき氏の作品に触れて以来、その世界観、人生観に深い感銘をうけ、常に尊敬させていただいてました。
大学に入って、上京して、初めて観た故人のライブ。本当に素晴らしかった。優しくて、それでいてシニカルで、音楽や人間への愛に溢れていて…。握手してもらった時の手の感覚と優しい笑顔は本当に忘れられません。
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音楽的なことだけでなく、氏の歌や人間に対する暖かな視点といったものに大きく影響を受けました。
歌は常に民衆のものであり、生活者のものである。生活の痛みや喜び、そういったことを歌に託す。

胸がいっぱいになってきてしまったよ。死んでしまうには本当に早すぎるよ。

心からご冥福をお祈りします。本当にありがとうございました。
天国ではあなたの好きなお酒を心行くまで呑んで下さいね。
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by beatken | 2005-04-17 01:32 | review