2005年 03月 11日
しわがれ声の酔いどれ詩人…。さすらいのビート詩人…。人生の哀楽を深いペーソスに乗せて語りかける老成した詩情…。 これは、そんな彼の未だ青く、頼りなげだった頃の貴重な記録である。 弾き語りを中心に淡い感傷が歌い綴られていく。後年のように歌声もまだしわがれておらず、良質のアメリカンコーヒーのように幾分ビターな感傷が、青年のつぶやきと共に切なく織り合う。 彼独特の叙情はすでにこの頃から一級品だ。この叙情に一度はまってしまうと、彼の存在は聞き手の中で別格のものとなってしまうのですよね。このアルバムではそうした部分と若い感傷とがあいまって実にいい味を出してるんです…。 単純に心に染みる、という観点から言えば後のオリジナルアルバム群と全くひけをとりません。しかしむしろ、ここでしか味わいがたい渋柿のような青臭さを心地よく味わうことこそがこのアルバムの聴き方かもしれません。悩み、哀しみ、笑い…。カリフォルニア、ロサンゼルスに漂う甘い退廃の臭いを届けてくれる気がします。どんな旅行パンフレットを眺めるよりロマンチックなインスピレーションを与えてくれます…。 夜も明けるかというこんな時間に聴いていると、たまらなく想いは膨らみます。 ちなみに、のちのファーストアルバムに収められる楽曲のうち、名曲‘Icecream Man’など数曲の雛形もここで聴けます。そういったことからも、あの名作“Closing Time”にはまってしまった方などは必聴だと思います。 未聴なのですが続編のvol.2もリリースされているらしいので併せて持っていたい作品集ですね。 <しばさき>
by beatken
| 2005-03-11 05:11
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